名古屋東照宮 舞楽
2009年4月16日、17日の両日、名古屋市中区丸の内にある名古屋東照宮で例祭が執り行われました。16日は夕方から舞楽の奉納が行われ、境内に組まれた舞台の上で8種の演目が披露されました。
写真
御祭礼の初日の4月15日には、三基の神輿(みこし)を祭文殿へ出し御供物を献上する。翌16日の早朝に舞楽が演られ、身分の上下を問わず参詣が許された。尾張名所図会(イメージ着色)
名古屋東照宮 例祭
江戸時代を通じて、東照宮祭は亀王天王社(現在の那古野神社)の天王祭、若宮八幡社の若宮祭とならんで名古屋三大祭とされていました。なかでも東照宮祭は戦前まで、名古屋最大の祭りとして親しまれていました。
江戸時代、三之丸の東照宮から本町通を下り末広町の御旅所まで、三基の神輿(みこし)と山車が繰り出され、総勢4000名を超える人々が行列を作って練り歩いていたといわれています。
明治9年、東照宮が那古野(なごや)神社とともに現在の場所(旧藩校明倫堂跡地)に移転された後も、「名古屋祭」として盛大に行われていました。
戦時中、空襲によって山車の多くが焼失したため形を変えて、現在行われている「名古屋まつり(郷土英傑行列)」へと引き継がれました。現在の「名古屋まつり」で行われる山車の巡行はその名残といわれています。
- 江戸時代の東照宮祭の運行ルート
- 東照宮祭の行列 尾張名所図会(イメージ着色)
- 東照宮祭の行列 尾張名所図会(イメージ着色)
- 七間町の弁慶車が曳かれている 尾張名所図会(イメージ着色)
舞楽の解説
振鉾(えんぶ)
舞楽の最初にはまず振鉾を舞うのが恒例となっている。正式には三節あって、第一節は左方の舞人一人。
第二節は右方の舞人一人。第三節では左右の舞人が同時に舞う。これはそれぞれ、天神、地祇、先霊を祭り舞台を清める舞であり、古式では舞人が寿文をとなえたといわれるが現在は行わない。舞人は左右との龍装束を右肩ぬぎに着て鉾を振る。簡単な儀礼的な舞である。
萬歳楽(まんざいらく)
左方文舞の代表的なもので、随の煬帝(ようだい)の時、鳳凰が飛来して賢王万歳とさえずったありさまを舞にしたといわれている。古来即位礼に用いられ、めでたい舞とされている。今回は都合により二人で舞う。
※ 煬帝・・隋朝の第2代皇帝
延喜楽(えんぎらく)
延喜八年に藤原忠房が作曲し、敦実親王が舞を作り、その時の年号を曲名としたもので、昔から万歳楽の番舞としてめでたいときに舞われる右方平舞(ひらまい–舞具を持たずにゆるやかに舞う)の
代表的なものである。今回は都合により二人で舞う。
打球楽(だきゅうらく)
騎馬装束を着けた舞人たちがホッケーのスティツクに似た球杖を高く振り上げて舞台の上に置かれた木製の球を打つさまを主題とした舞である。
舞の後半、一臈(ろう)だけが自分の前に置いた球を八方から打つという独特の動作をするのが珍しい。本来四人の舞として作られているが、今回は都合により舞人は二人だけである。
陪臚(ばいろ)
天平年間にわが国に渡来した林邑(南ベトナム)の僧仏哲が伝えたといわれる林邑八楽(りんゆうはちがく)のひとつ。武官禰襠装束に剣を着け楯と矛を持った舞人による戦いを象徴する舞である。陪臚(ばいろ)の原曲は管絃曲としてしばしば演奏されるが、舞楽のときは日本で創作された夜多羅拍子(やたらびょうし・・・特殊な変拍子)に変えて舞い、これを破の章とし、終曲の急の章には壱越調の新羅(しらぎ)陵王をあてて一具を構成している。
※ 林邑八楽・・・雅楽において「万秋楽」「安摩」「胡飲酒」「陪臚」「抜頭」「菩薩」「蘭陵王」「迦陵頻」の8つの舞楽曲を指す。
陵王(りようおう)
左方走物の代表的なものである。曲と舞の起源には諸説があるが、中国の北斉(550年 – 577年)、蘭陵王長恭は勇将であったが、やさしい美貌であったため、戦場では常におそろしげな仮面を着けて指揮した故事によるものが知られている。
落蹲(らくそん)
この曲を二人で舞うときは納曽利といい、双竜舞の別名があるように竜が遊びたわむれているようすをうつしたといわれている。落蹲(らくそん)の名はこの曲の破の終りに舞人が蹲居(そんきょ・・うずくまる)するところから出たものと思われる。右方走物の代表的なものである。
※ 右方舞と左方舞走物大陸から伝わった楽舞のうち、右方は『高麗楽』(朝鮮半島)伝来を中心に構成されており、左方は『唐楽』(大陸伝来)を中心に構成されている。
長慶子(ちょうげいし)
舞は無く舞楽の最終の曲として演奏される。平安中期の音楽の天才源博雅の作曲とも、唐楽の長慶楽を彼が改作したものといわれている。はぎれのいい楽句はととのった転結を示し、躍動的な三度拍子とあいまって舞楽の終わりにふさわしい曲として愛好されている。
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